研究概要 |
本研究では,地方分権化社会における地域間交通基盤施設(特に地域間の地方道路ネットワーク)の整備と維持の方策について,地方政府自身が自己財政基盤のもとで主体的に整備の量と質を決定するという「地方分権的な交通基盤整備」の帰結について理論モデルを用いてその基本構造の解明を試みた.さらに,開発した理論モデルを用いて地方分権的道路整備による地方道路ネットワークの整備状況について分析した.分析では,特に地域間の個別の整備における「ただ乗り」誘因など戦略的行動の構造を明らかにし,整備の非効率性および地域間不衡平性を明らかにした.さらに,このような分権的整備における地域の戦略的行動のみならず,地域間での交通基盤整備に関する協力である「連携整備」の自発的創発のメカニズムとその効果的誘導のための中央政府の政策について検討した.特に,前年度の産業立地行動の分析に引き続き,地域の交通基盤整備決定のタイミングが整備水準に与える影響に関する分析を進めた.また,開発した分権整備に関する地域間一般均衡モデルを我が国の地域に適用して数値分析を行い,その均衡ネットワーク整備状況を分析した.交通基盤施設の地方分権的整備と地域連携の可能性に関する理論的な解明は重要な研究課題と考えるが,申請者の知る限り国の内外を問わずほとんど扱われていない,整備決定に提携形成ゲーム概念を用いたのが本研究の特に独創的な点であり,本研究で「交通基盤施設の分権型整備」の戦略的行動の帰結とその基本構造が明らかになり,来るべき地方分権化社会の交通基盤施設の整備に関する理論的な裏づけと政策的含意を与えると考える.
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