研究課題/領域番号 |
21560567
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
村尾 直人 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (00190869)
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研究分担者 |
山形 定 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (80220242)
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キーワード | 大気エアロゾル / 東アジア / 吸収係数 / 気候影響 / 発生源-リセプター関係 / 広域汚染 / 化学輸送モデル / 地域気象モデル |
研究概要 |
本研究では、中国が進めている大気汚染・温暖化対策が、短寿命の微粒子成分の分布をどのように変えどのような気候影響をもたらすものであるかを明らかにするための基礎資料を得ることを研究の目的としている。平成23年度は最終年度として、これまでの観測結果、開発したモデルを用いて、大気エアロゾルの気候影響の評価に関する研究を実施した。 まず、エアロゾルの地上観測値を基に、東アジア域における光学的厚さの広域分布を作成した。春季においては、中国大陸沿岸部で光学的厚さが0.24~0.73、韓国で0.36、日本の日本海側においては0.23~0.34、タイ周辺域で、0.55~0.49という値になった。一方、夏季には、中国沿岸部では日射量の増加により光化学大気汚染が進行し、光化学エアロゾルが大量に生成されて光学的厚さが高くなり、中国大陸沿岸部で0.22~0.84、韓国で0.50と春季に比べて高くなっていた。日本地域においては、0.18~0.27と春季に比べて低い値となった。次に、以上の結果を用いて放射伝達計算を行うことにより、東アジア域におけるエアロゾルの太陽放射吸収に伴う大気加熱率の高度分布を算出した。その結果、特に太湖の地表付近で夏季に3K/dayの加熱が見られ、乾季のPimaiの地表付近で2.2K/dayの加熱が見られた。さらに東アジア域における大気加熱率の算出値を地域気象モデルに組み込むことによりエアロゾルがある場合と無い場合との気温変化を計算した。その結果、中国大陸のハルビン東部域において1.5~2〔℃〕程の昇温が見みられた。一方、中国大陸の大部分においては0~0.5〔℃〕程の冷却傾向が見られた。これは、エアロゾルの地表における大気加熱率の値と大きく異なる。この理由として、実際の気温の決定においては、地表面へ到達する日射量の変化に伴う地表面温度の変化、地表面から射出される赤外放射量の吸収による大気層の気温の変化が生じるためであると考えられる。
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