| 研究概要 |
環境水,とりわけ河川水には種々多様な微量の有害物質が存在するため,生物検定(バイオアッセイ)を用いて複合毒性として水質リスクを評価する必要性が高まっている。生態系への影響の観点からは特に長期的な生態毒性を定量的に評価することが有用である。本研究の目的は,多地点における河川水サンプルを対象として,Daphnia magna(オオミジンコ)を用いた生態毒性試験を実施し,その結果に基づいて水質健全性レベルを提案することである。試験法として,長期毒性や生殖への影響を高感度で評価できるD.magna繁殖試験を適用する。22年度は,選定したサンプリング地点の河川水を用いて,21年度に確立したD.magna繁殖試験による河川水の水質健全性評価を行った。その結果,対照系と同レベルの産仔数を示すサンプルが半数以上を占めたが,一部のサンプルでは産仔数の有意な減少がみられ,河川水の長期的な生態毒性評価手法として本法が有用であることを示した。
一方,D.magna繁殖試験は,長期的な生態影響を高感度で評価できる信頼性が高い方法であるが,試験期間が21日間生長期に渡り手間もかかるため,効率的なデータ取得が一般に困難である。そこで,長期影響を短時間で評価する新規の簡易毒性試験技術の開発について検討した。新規試験は,河川水中有機物を濃縮した試験水を用いてOECD急性遊泳阻害試験に準じて行った。本試験においても遊泳阻害率に明確な差が見られた結果となり,本法の適用可能性を見出した。次年度は本試験と繁殖試験との関連性をより詳細に検討していく計画である。
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