研究概要 |
1.研究概要 本研究では,新しい破壊形式(以後,せん断降伏と呼ぶ)で決まるL形断面耐震壁(以後,L形壁と呼ぶ)の二方向耐力について実験によって明らかにするために,水平力に対して圧縮側となる側柱脚部が大きく伸びた場合の平面壁のせん断降伏耐力を検討することを目的としている。今年度は,柱補強筋を少なく配筋して壁補強筋を変化させた実物約1/4の鉄筋コンクリート平面耐震壁模型4体の実験を行い,水平荷重,軸方向力,柱主筋と壁補強筋のひずみ度などから,柱補強筋が少ない場合について壁補強筋が平面壁のせん断降伏耐力に及ぼす影響に関する検討を行った。 2.成果の要約 (1)最大荷重実験値tQmaxの建築学会靭性保証型耐震設計指針によるせん断強度式の値Vuに対する比率tQmax/Vuは,ps・σsy/νσB(ps:壁筋比,σsy:壁筋の降伏点強度,ν:コンクリートの有効係数,σB:コンクリート圧縮強度)が0.15前後のときには,側柱脚部が大きく伸びた場合と圧縮軸力を加えた場合ではあまり差が見られなかった。(2)tQmax/Vuは,ps・σsy/νσBが0.03~0.08の範囲では,圧縮軸力を加えた場合で0.93~1.23(平均1.12,変動率27%),柱脚部が大きく伸びた場合で0.68~1.09(平均0.88,変動率47%)となり,柱脚部が大きく伸びた場合の方が平均で0.24小さくなり,ばらつきも大きくなった。(3)ps・σsy/νσBが大きい場合にはトラス機構によるせん断力,ps・σsy/νσBが小さい場合にはアーチ機構によるせん断力の影響がそれぞれ大きく表れると考えると,ps・σsy/νσBが小さい場合の圧縮軸力を加えた時に対する柱脚部が大きく伸びたときの耐力の低下は,アーチ機構による耐力の低下が一因と思われるので,この点については更に検討を進めていきたい。
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