研究概要 |
1.研究概要 本研究では,新しい破壊形式(以後,せん断降伏と呼ぶ)で決まるL形断面耐震壁(以後,L形壁と呼ぶ)の二方向耐力について実験によって明らかにするために,水平力に対して圧縮側となる側柱脚部が大きく伸びた場合の平面壁のせん断降伏耐力を検討することを目的としている。今年度は,壁補強筋を多く配筋して柱補強筋を変化させた実物約1/4の鉄筋コンクリート平面耐震壁模型4体の実験を行い,水平荷重,軸方向力,柱主筋と壁補強筋のひずみ度などから,壁補強筋が多い場合について柱補強筋が平面壁のせん断降伏耐力に及ぼす影響に関する検討を行った。 2.成果の要約 (1)最大荷重実験値tQmaxの建築学会靭性保証型耐震設計指針によるせん断強度式の値Vuに対する比率tQmax/Vuは,柱補強筋比pwの大小にかかわらず,側柱脚部が伸びた場合の方が圧縮軸力を加えた場合に比べて小さくなった。(2)tQmax/Vuは,pwが0.33%の時には圧縮軸力を加えた場合と柱脚部が大きく伸びた場合でそれぞれ1.13,1.03となり,pwが1.21%の時にはそれぞれ1.30,1.03となった。pwが大きい場合の方がtQmax/Vuの低下割合は大きくなった。(3)pwの大小はアーチ機構によるせん断力に影響すると考えると,圧縮軸力を加えた時に対する柱脚部が大きく伸びたときの耐力の低下は,コンクリートの圧縮強度が実質的に低下する(せん断ひび割れが発生した中を圧縮応力が流れる)ことが一因と思われる。この点については更に検討を進めていきたい。
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