研究課題
鉄筋コンクリート造建築物の物理的な耐用年数を評価し、寿命を予測するためには、コンクリートの劣化や鉄筋腐食に及ぼす各種要因の定量的影響を評価する必要がある。本研究は、鉄筋腐食速度に及ぼすコンクリート中の塩化物イオン量、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さおよびコンクリートの水セメント比の影響を、20年の長期にわたる屋外暴露試験結果に基づいて定量的に評価したものである。鉄筋腐食に及ぼす各種要因の水準は、コンクリート中の塩化物イオン量が0、0.1、0.3、0.5、1.0%NaCl/砂、かぶり厚さが15、20、30、40mm、水セメント比が50、55、60、65%である。評価項目は、コンクリートのひび割れ幅、鉄筋腐食:面積率および鉄筋腐食質量減少率である。本研究の結果は、次のようにまとめられる。(1)ひび割れが発生していないときの質量減少率の最大値は、かぶり厚さが大きくなるにともなって大きくなる傾向にある。(2)鉄筋の質量減少率は、屋外暴露期間が9年までは、暴露期間の増加にともなって直線的に増加する傾向にあったが、暴露期間が15年および20年までの結果を加えると屋外暴露期間の平方根に比例する傾向にある。(3)鉄筋腐食速度係数に及ぼすかぶり厚さの影響は、塩化物イオン量により異なり、塩化物イオン量が0~0.3%の範囲では、かぶり厚さが大きくなるにともなって小さくなる傾向にある。しかし、塩化物イオン量が0.5%以上の範囲ではかぶり厚さの影響は小さくなり、かぶり厚さ15mmと40mmとで鉄筋腐食速度係数はほぼ同程度の値を示した。(4)本研究の範囲で、鉄筋腐食速度係数は、塩化物イオン量に応じて次のように表される。(i)塩化物イオン量0.0%NaCl/砂q=0.927/C1.9(W/C-54.3)(ii)塩化物イオン量0.1%NaCl/砂q=0.023/C0.8(W/C-18.7)(III)塩化物イオン量0.3%NaCl/砂q=0.056/C0.6(W/C-35.7)(iv)塩化物イオン量0.5%NaCl/砂q=0.045/C0.2(W/C-43.4)(v)塩化物イオン量1.0%NaCl/砂q=0.085/C0(W/C-38.8)
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日本建築学会構造系論文集
巻: Vol.77, No.672 ページ: 143-152