| 研究概要 |
本研究では,ラーメン架構としてのエネルギー吸収能力を維持しつつブレース架構としての強度を保持できる変位制御型ブレースを用いて,大地震時に鋼構造骨組に生じる過大変形を効率よく抑止する方法を構築することを目的としている。本年度の研究成果を項目別にまとめる。(1)既往の研究ではワイヤロープをブレース部材に用いていたが,それに代わる材料として鋼棒で構成されるテンションロッドの適用を試みた。接合部にリングジョイントを利用し,ブレース作用開始点の調整を可能とした。なお,ブレース交差部にはクロスターンバックルを利用しブレースに偏心が生じることを回避した。(2)テンションロッドを用いた変位制御型ブレースの構造性能を確認するために繰返し載荷実験を行った。3通りのブレース作用開始点を想定し,それぞれについて5回ずつ実験を行った。実験結果を分析しターンバックルによるブレース長の調節によるブレース作用開始点の調整が,十分な精度で実現できることを確認した。(3)変位制御型ブレース構造の特徴はブレース作用開始を遅らせてラーメン架構のエネルギー吸収能力を発揮させることであるが,さらに架構のエネルギー吸収性能を高めるため鋼材ダンパー(U形ダンパー)を用いた制振構造を検討した。チェビシェフの近似直線運動機構を導入し,ブレースに圧縮軸力が作用しない構造形式を構築した。門型骨組にダンパーを組み込んだ試験体の繰り返し載荷実験を行いダンパー付き架構の構造性能を確認した。さらに,3層骨組の有限要素解析により実大規模での構造性能を明らかにした。
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