研究概要 |
本研究の目的は,性能設計の実現を目指して,構造特性の不確定性を考慮した最大変位応答に基づく実用的な耐震性能評価法を構築することである。特に,地震時の骨組の損傷度や安全性は最大変形量と良く対応することから,骨組の必要変形性能を把握することは極めて重要である。各次振動モードの二乗和平方(SRSS)によって最大変位応答を評価するモーダルアナリシスは比較的精度の良い手法であり,Inelastic Modal Predictorなど,塑性域にまで拡張した手法もいくつか提案されている。これを実用的な耐震信頼性評価に展開するためには,弾塑性1質点系の確率論的ハザード情報が必要となる。 弾塑性1質点系の最大変位応答を評価する方法としては,弾性応答スペクトルによる確率論的地震ハザード情報から得られる,各固有周期において超過確率が等しい応答値をつないだ一様ハザードスペクトル(UHS)や,ある固有周期において超過確率n%の応答値をとるという条件の下で各固有周期における応答の平均値をつないだ条件付平均応答スペクトルを等価線形化手法と併せて用いる方法などがこれまでに提案されている。後者は,米国で検討されている方法であるが,50年10%超過確率はかなりの過小評価となる一方,前者は,固有周期の短い領域では過大評価となる以外は全般的に精度が良いことを示した。さらに,簡単なモデルを用いて,短周期領域における前者の手法の精度を向上する方法の方向性を示した。 また,実用的な設計法へと展開するために,まずは取り扱いの簡単な使用限界状態設計を対象に,荷重耐力係数を用いることができる設計条件式を導いた。さらに,これまで提案されている荷重耐力係数の略算法を適用する上での問題点を整理し,これを解決すべく,新たな略算法を提案した。
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