研究概要 |
平成22年度までは,高硬度ゴムをダンパー要素とする制振システムについての研究を実施した.高硬度ゴムは,小振幅領域では高い減衰性能を示すものの,振幅の増大とともに減衰性能が低下するという欠点も有している.そこでこの欠点を補うために,平成23年度には,高硬度ゴムダンパー要素と履歴ダンパー要素とを並列に用いたハイブリッド制振ダンパーシステムを提案して,以下の項目を達成した. (1)上記の制振システムを,多層弾性建物に組み込んだ際の地震時応答を,等価線形化手法と応答スペクトル法を用いて簡易的に評価する手法を提案して,時刻歴応答解析による評価法との比較を行い,提案した評価法が実用上十分な精度を有していることを確認した. (2)上記の制振システムの実物大試験体を作成して,逆さ吊り載荷フレームに組み込み,自由振動実験を実施した.上記の制振システムが,高硬度ゴムの減衰性能により振幅1mm以下の微小な振動でも高い制振効果を発揮することと,履歴ダンパー要素の降伏によるエネルギー吸収性能により大振幅域でも高い制振効果を発揮することを確認した.さらに,高硬度ゴムの履歴特性モデルを組み込んだ汎用解析ソフトにより,高い精度で自由振動をシミュレートできることを確認した. (3)ある指定したダンパー変位において,高硬度ゴムダンパー要素による付加減衰定数と履歴ダンパー要素による付加減衰定数がちょうど等しくなるような両ダンパーの設置量を簡便に見出すことができる,ダンパー要素設計手法を構築した. なお,上記の成果は,平成24年6月に開催される日本建築学会近畿支部研究報告会で発表予定である.
|