研究概要 |
接合部パネルの設計の考え方には,日米の間に大きな相違が存在するが,現在の処,この相違の理由は合理的には説明されていない.この一因として,未だに接合部パネルのせん断挙動が柱および梁部材の弾塑性挙動に及ぼす影響が十分に解明されていないこと,実験資料の蓄積が不十分であることが挙げられる.一昨年度にH形断面柱梁接合部について,接合部パネルと梁部材の耐力の等を変数とした計11体の実験を行い,弱パネル形式の試験体は,強パネル形式の試験体に比べ,骨組の耐力が低下するが,高い塑性変形能力を示すことを明らかにした.昨年度は,有限要素解析を実施し,破壊の起点となる可能性のあるa)スカラップ底,b)梁フランジ溶接始終端の鋼製エンドタブと梁フランジのスリット部,c)梁フランジ中央の溶接ルート部および止端部の相当塑性歪および応力三軸度について,検討を行い,骨組の全体変形角が等しい時点の歪集中点の相当塑性歪は,反対に弱パネル形式の方が減少することを明らかにした. 本年度は,接合部パネルの塑性化を考慮した骨組の地震応答解析を実施する際に必要となる接合部パネルの復元力モデルと弱パネル形式の場合の梁の復元力モデルの定式化を行った.実験結果によると接合部パネルの塑性挙動は現行の耐力評価式の0.8倍程度で生じている.この原因は定かではないが,有限要素解析結果では塑性挙動は現行の耐力評価式の1.0倍程度で生じていることより,残留応力の影響と考えられる.塑性後の耐力上昇率については,柱梁フランジの枠組耐力と接合部パネルの耐力の比が大きいほど上昇すると考える既報のモデルと良い対応関係を示すことを確認した.またこの耐力上昇率は,接合部パネルと梁の耐力比を変数とする関数で精度よく近似できることを示した.梁の復元力特性については,接合部パネルと梁の耐力比が小さくなると,塑性挙動が開始する荷重が低下することを,実験および有限要素解析により確認した.最終的には,これらの特性を踏まえた接合部パネルおよび梁の復元力モデルを実験式の形で定式化した.また,接合部パネルの塑性化の影響を考慮した梁の塑性変形能力を評価する実験式を示した.
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