研究概要 |
建物の耐震設計では,個々の部材および建物全体の地震時挙動の制御を可能とする性能評価型設計法への移行が進みつつある。性能評価型設計法を確立するためには,部材の復元力特性やそれに付随した損傷状況を把握する必要があるが,プレストレスト・コンクリート(PC)部材においては,断面の鉄筋とPC鋼材の配筋量,およびそれらの付着性状によって耐震性能が大きく変化し,その組み合わせが多岐にわたるため,性能評価型設計法を確立するための十分な資料は得られていない。 そこで本研究では,PC鋼材周囲の付着性状が梁部材の耐震性能に与える影響を調査することを主要な目的として,梁曲げ破壊型のPRC十字形柱梁部分骨組試験体4体に対して静的載荷実験を行った。その結果から復元力特性,梁主筋の付着性状,塑性ヒンジ領域長さ,残留変形,ひび割れ幅,梁部材の各種限界状態,等価粘性減衰定数などについて検討する。 梁部材のPC鋼材として異形PC鋼棒(D22),丸鋼(φ21)および19本より線(φ178)を断面の上下に各々1本ずつ配筋し,主筋として上下とも2-D13を配するのを標準とした。ただし,PC鋼材および普通主筋に沿った付着性状の組み合わせの影響を検討するため,普通主筋として丸鋼(2-φ13)を配筋した試験体も作製した。コンクリート圧縮強度は60MPaであり,粗骨材径は13mmとした。 これとは別に、本研究室で実施した既往の実験結果を詳細に分析することによって、PC梁の部材角と残留ひび割れ幅との関係を定量的に評価する手法を提案した。
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