建物の振動特性把握法として最も簡便な手法は常時微動による方法である。しかしながら、常時微動は、季節、曜日、時間帯によって大きく変動し、一般に信頼性に劣る。本研究は、地盤の常時微動測定で近年多く用いられている微動H/Vスペクトル比の建築物をはじめとする構造物への適用性を検討し、簡便で、信頼性の高い常時微動測定法を提案しようとするものである。 本年度は、昨年度の継続として福井市内の4校の低層(3階建て)の小学校校舎および4棟の中高層(8~16階建て)の大学校舎について、高感度ポータブル振動計(GPL-6A3P)を用いて常時微動測定を実施した。記録したデータについて波形解析を行い、最上階の速度フーリエスペクトルおよびH/Vスペクトル比、最上階/地盤のフーリエスペクトル比(いわゆるスペクトル比)の精度を検討するとともに、建物の基本振動特性を把握した。 他方、最も基本的な振動モデルである1層1スパンのラーメン模型を用いて、減衰定数および模型地盤特性をパラメータとした常時微動測定を行い、その波形解析結果から各種のスペクトル特性を比較検討した。この結果から、地盤と建物の卓越振動数が離れている場合は、上層階における速度フーリエスペクトルおよびH/Vスペクトル比は建物の振動特性把握に有効であるが、両者が近接している場合は結果の判断に注意する必要があることを示した。
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