1.研究の目的 本研究は、簡便でより精度の高い建物の振動特性推定法の開発を目的とする。具体的には、種々の地盤における建物の微動測定波形の速度フーリエスペクトル(以下、速度フーリエ)、フーリエスペクトル比(以下、スペクトル比)、H/Vスペクトル比(以下、建物H/V)の3つのスペクトルの比較検討から、建物H/Vの有効性とその限界を明らかにしようとするものである。 2.本年度の研究内容 1層1スパンのラーメン模型を用いて、実地盤において微動測定を行い、スペクトル特性を検討した。模型の減衰機構には粘弾性体を使用し、3ケースを設定した。地盤は福井市内の平野部5地点および山際部2地点の7地点とした。平野部の表層地盤の卓越振動数は1.4~1.7Hzであり、模型の固有振動数に比較的近接している。他方、山際部の卓越振動数は4~5Hzであり、模型の固有振動数よりも高い。 3.研究成果 (1)地盤の卓越振動数とラーメン模型の固有振動数が離れている、あるいは、地盤H/Vが明確な卓越成分を示さない場合は、速度フーリエおよび建物H/Vはスペクトル比と比較的相似のスペクトル形状を示す。他方、これらが近接している場合は、速度フーリエおよび建物H/Vはスペクトル比と相似の形状を示さない。これらの結果から、地盤の卓越振動数と建物の固有振動数が近接していない場合は、建物H/Vは建物の振動特性の推定に有効であると考えられる。 (2)地盤の卓越成分の影響を強く受けない場合は、スペクトル比ピーク高さA_<SP>と建物H/Vピーク高さA_<HV>幅はほぼ直線関係を示し、A_<HV>=1.55A_<SP>で表される。また、昨年度の模擬地盤においてはA_<HV>=1.41A_<SP>で近似される。この結果から、A_<HV>はA_<SP>の約1.5倍と推定され、建物H/Vは建物の減衰特性を推定できる可能性を示唆していると思われる。
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