プレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)部材は、プレストレスという付加価値によって、曲げひびわれ性状が制御できる、性能評価型設計法に適した構造であるので、日本建築学会および土木学会においても、指針・示方書が提示されている。しかし、実大に近い中型・大型試験体に対する適用性には未だ疑義が残る状況で、特に、実大スケール部材における持続荷重下におけるひび割れ性状は、乾燥収縮の課題と共に未解明な点が多い。 本研究では、JIS規定の小型角柱試験体(10×10×400mm)と大型角柱試験体(310×600×2000mm)による乾燥収縮量の実態測定を行い、以下のような成果を得た。なお、持続荷重を受けるPRC梁のたわみ・ひび割れ性状も予備的に調べたが、計測装置の不調から十分な資料は今回得られなかった。 1.JIS規定の小型角柱試験体の乾燥収縮量は、材齢180日程度では、中・大型角柱試験体のそれに比べ約2倍程度大きく、実部材の素材性質を与えるにすぎない。 2.大型試験体の収縮ひずみは、建築学会の収縮ひび割れ制御設計の指針式によってほぼ推定できた。 3.大型の無筋試験体に対する有筋試験体の収縮ひずみ比は0.75~0.8程度で、主筋によるコンクリートの収縮ひずみの拘束が認められた。 4.コンクリート打込み側の梁断面上端部分での収縮ひずみと断面中央部・下端のそれとの差は10%程度と大きくない。
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