研究概要 |
平成21・22年度に,薄肉鋼管で横補強した鋼コンクリート合成柱材(以下SC柱と略記する)と鉄骨梁で構成された骨組に鋼ブレースを耐震要素として組合せた合成構造骨組に圧縮軸力と繰返し水平力を載荷する実験を行った。平成23年度は,2年間の実験結果を基に,合成構造骨組の弾塑性解析を行い,ブレースの有無および変動軸力が合成構造骨組の弾塑性挙動に及ぼす影響を調べ,下記のことを明らかとした. 1)細長比87程度のブレースを組込むことで,水平剛性がラーメン骨組の3.5倍になる。しかし,骨組に変動軸力を含む高軸力が作用するとブレースは鉛直荷重の影響を受けるため,早期に座屈が起こり,骨組の変形性状に影響が出る。 2)断面圧縮耐力に対する作用軸力が0.49と高軸力を負担してもSC柱には大きな損傷は無く,大変形域でも幅厚比87程度の薄肉鋼管によリコンクリートの剥離を抑え,高い性能を維持できた。さらに,変動軸力の有無で骨組の破壊モードに変化は無く,ブレースが安定した挙動を示した。 3)解析により,骨組の応力分布を分析した結果,層間変形角が0.5%程度では,ブレースがほとんどの水平力を負担している.その後,変形が大きくなるとブレースの負担割合が少なくなるが,層間変形角が2.0%を超える大変形域でも,ブレ-スの水平力負担割合は50%~70%を保持している。 以上のことより,SC柱は高い構造性能を保有し,ブレースなどの水平抵抗要素と組合わせた合成構造骨組は優れた耐震性能を示すことを明らかとした. 鉄骨鉄筋コンクリート(以下SRCと略記)構造は優れた耐震性能を持つ構造であるが,柱梁接合部で鉄骨と主筋が複雑に交差することや,鉄骨加工と配筋・型枠作業など解決すべき課題がある.本研究で対象としているSC柱を用いた合成構造は,SRC構造のこれらの課題を解決できる構造であり,さらに,SRC構造と同等以上の構造性能を保持している.
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