研究概要 |
昨年度と同様に豊田市役所建築相談課の協力を得て,昭和56年以前に建てられた木造2階建住宅で,市が実施した無料耐震診断を受けて「倒壊の危険性が高い」と評価されて耐震補強を行っていない約300棟の居住者を対象にしてアンケート調査を実施した。その中で,水平起振実験を希望した約50棟の木造2階建住宅について,代表者とアルバイト学生2人~3人が機材を載せた自家用車で住宅まで出向いて,水平起振実験を行った。実験は主に2階の中央の部屋で行い,はじめに人力起振実験で住宅の固有振動数を測定し,次に水平起振器を用いて固有振動数で定常加振実験を行い,各地点で振動を測定してねじれ振幅率を求めた。その際に,居住者の方にも揺れを体験してもらい,(1)どちらの方向が揺れ易いのか,(2)どの場所が一番大きく揺れるのか,などを揺れの大きさから分かってもらい,住宅の耐震診断結果と照合して理解してもらった。 最後に,この研究によって実験を行った約100棟の木造2階建住宅を対象として,実験結果を耐震診断結果と比較して,以下のことが判明した。(1)昭和56年以前の木造2階建住宅の固有振動数は,住宅の重さ種別に強く依存し,入母屋屋根や土葺瓦屋根などによって住宅が重くなると固有振動数は低くなる。(2)住宅の2階面積比が0.5以上であれば,木造2階建住宅の固有振動数は,耐震診断結果の1階構造評点と良い正の相関が見られる。(3)住宅の重心軸上で起振できる場合に,桁行(東西)方向加振時では,南側の振幅が北側に比べて増大する傾向が見られる。これは北側の開口部には雑壁が多いのに対して,南側の開口部には雑壁が少ないためと考えられる。一方,梁間方向加振時のねじれ振幅率は,耐震診断結果である1階の偏心率と良い相関があり,偏心率が大きいとねじれ振幅率も大きくなる。
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