研究概要 |
近年、日本では調湿建材と呼ばれる内装材料が注目されている。調湿建材については既往の研究により、室内温湿度の変化や、調湿材を用いることによる室内かび汚染の制御効果の検証といった調湿材の性能を評価した研究結果は報告されているが、調湿材自体のかびの汚染源になるとの報告はほとんど見当たらない。本研究では、諸条件における調湿建材表面でのかび増殖特性を把握するために一連の実験的な研究と実態調査を行っている。 今年度は当初計画の通り、調湿建材を用いたチャンバー実験(基礎実験)を行い、諸条件における調湿建材でのカビ(Cladosporium cladosporioides,Aspergillus niger,Penicillium ponophilum)の生育状況を定量するとともに、カビの生育過程で放出される揮発性有機化合物質(MVOC)の発生特性について検討を行った。今年度とこれまでの研究成果を踏まえて,今年度では建材表面での真菌の増殖速度を定量的に評価できるカビ増殖指数(Mould Growth index、を提案した。MGIを用いることによって,建材評価でのカビ増殖速度は微生物の成長曲線と一致することが明らかになった。一方,本研究の実験条件でのMVOCの発生量が微量であったため,そのMVOCの特定ができなかった。 これまで、建材表面での微生物汚染の評価方法には、JISに規定されたものがあるが、これはかびの発育部分の面積によって評価するものであり、かびの増殖特性に対応した評価方法ではないため、半定量法とされている。本研究で提案する評価指標MGIは建材表面でのかび増殖速度を定量的に評価できるものである。
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