設計者や環境管理者が平易に明視性を診断することのできるツールを提供することを目的として、「実効輝度理論を適用し、視野輝度分布とその時間的変化・光源の分光特性・観察者の年齢や視力に配慮した〈明視性評価システム〉の提案」する。影響要因の関係と重要度を、我々を取り巻く視野の実態に基づいて整理し、これまでに得てきた知見の活用と未検討要因に関する実験を行い、要因間の関係を関数化・標準化し、条件入力から評価出力までの流れを具体的に提案することが最終目標である。 平成21年度は主に、視力、年齢、散乱源の位置の影響について検討し、以下の知見を得ている。 (1) 視力の影響を確認するために、比較的視力の低い若齢者8名の視認閾値を測定し、既得の比較的視力の高い若齢者10名のデータと併せて、眼球内散乱光の輝度差弁別閾値への影響について検討を行った。注視点近傍からの散乱源によって生ずる散乱光の影響による輝度差弁別閾値の変化率は、視力が低いほど大きいが、視力1.0以上では差異がない。注視点から10度以上離れた散乱源については視力の影響は殆ど認められない。 (2) 加齢の影響を検討するために、高齢者5名の視認閾値の測定を行い、視力の等しい若齢者との比較検討を行った。注視点近傍からの散乱源によって生ずる輝度差弁別閾値の変化率には、加齢の影響は認められない。しかし、注視点から10度以上離れた散乱源については、輝度差弁別閾値の変化率は高齢者の方が大きく、は高齢者の方が大きく受けていると考えられる。 (3) 散乱源の方位による眼球内散乱光への影響について検討を行った。視野上方よりも下方にある散乱源の散乱光量が大きくなる傾向があるが、個人差が大きく、方位性が認められない者もいる。また、若齢者よりも高齢者により明瞭に方位性が認められる傾向がある。
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