研究課題
最終年である本年の目的は、(1)中国での日射ならびに主要気象項目の測定の継続、(2)既存気象データおよび現在の日射量における天空・直達成分比率の確認、(3)成分比率にもとづく既存標準年気象データの補正版の提案である。(1)は、本科研の準備段階から行って来たものであり、修正がこの観測データにもとづく限り、最重要項目である。中国・上海での観測となるため、海外連携研究者である同済大学の譚教授との連携のもと、長期間に渡る観測を実施できたが、度重なる電力障害、とくに無計画な停電が大きな障害要因となっている。非常用電源などの確保も費用面で難しいため、のちの欠測補充で品質保持を試みている。幸い、研究代表者らは、国内での気象データ、すなわち拡張アメダス気象データの作成において、こうした欠測補充作業を主担していることもあり、精度を保った結果を得られている。(2)については、これまでの成果から、とくに夏期の直達比率が過剰に大きすぎることが判明している。事例を上げれば、7月のうちの25日間が雲ひとつない快晴の天候となっているのが既存の上海の標準年気象データである。しかるに、これまでの3年間の観測期間で快晴が先の日数も継続した年はなく、あまりに極端に偏り過ぎた標準年データであることはあきらかである。そこで問題の多い夏期の期間をとくに慎重に検証し、井川の天空輝度マップをもとにした度数の適正を評価することにした。これによれば、(3)の修正版作成の際の度数補正も容易となるからである。実際に修正版を作成するための成分比率変更を行ったところ、実在気象データから算出される熱負荷に準ずる値も算定できることが判明した。こうした負荷レベルでの整合を確保できていることから、正常な負荷計算のデータとして活用が期待される。事実、上海などに展開している日系建設関連業からの引き合いも来ているので、社会的意義は大きいと想定される。
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日本建築学会環境系論文集
巻: No.77, No.673 ページ: 121-127