本研究では、いわゆる環境弱者としての車いすを使用する障碍者等を対象とした温熱環境設計・評価法の確立に関する研究を行う。具体的には、主に次の4項目を行った。 1. 障碍者(主として脊髄損傷者)の生活温熱環境実態と簡易改善方法の検討 頸髄損傷者3名の自宅居室における温湿度等の温熱環境の実測調査を行って、その実態を把握するとともに暖冷房の使用状況等について把握・分析を行った。さらに、居室温熱環境の簡易改善方法として、熱損失の比較的大きい窓ガラスに気泡断熱シートを取り付けた場合の温熱環境改善効果を測定した。 2. 体温調節数値シミュレーションのための温熱環境に対する生理心理反応測定 障碍者(主として脊髄・頸髄損傷者)の温熱環境に対する生理心理反応のデータを取得し、体温調節数値シミュレーションのための基礎データとするため、人工気候室内において頸髄損傷者1名および健常者1名を対象として、温熱環境条件(定常状態および非定常状態)に対する生理・心理反応を測定した。その結果、頸髄損傷者の深部体温は、体温調節機能の欠如によって環境温度に大きく影響することが確認された。また、末梢部の皮膚温変動について周波数分析を行った。 3. 体温調節支援システム構築のための体温調節数値シミュレーションモデルの検討と 体温調節機能に障碍を持つ人々に対する体温調節支援システムを構築するために、既存の体温調節モデル(Stolwijkモデル)の改良と障碍者等の身体的特徴(皮膚分節、筋萎縮等)の影響について検討した。 4. 屋外環境における車いす乗車人体に対する熱的影響についての基礎的検討 体温調節支援システムを屋外環境に応用するための基礎的検討として、車いすに対する日射の照り返しの影響について検討した。車いすに対する照り返し吸収率を定義し、屋外実験によって実測を行った。
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