本研究では、いわゆる環境弱者としての車いすを使用する障碍者等を対象とした温熱環境設計・評価法の確立に関する研究を行う。22年度は、主に次の3項目を行った。 1. 体温調節支援システム構築のための体温調節数値シミュレーションモデルの検討 前年度までに、既存の体温調節モデル(Stolwi jkモデル)を改良して、頸髄損傷者の体温調節シミュレーションモデルの基礎を構築した。このモデルを用いて、人体と車いすとの熱伝導の影響として接触面積、および温熱環境条件の影響としての放射・対流熱伝達率の違いによる体温予測に対する影響について基礎的な検討を行い、その特性について把握した。さらに、体温調節ができない頸損者が実際に行っている暑熱・防寒対策としての局部冷却・加熱の効果についてシミュレーションを行い、その対処手法の体温に対する影響について検討した。 2. 体温調節数値シミュレーションモデルと被験者実験との比較検討 構築したシミュレーションモデルと、頸損者を被験者とした温熱環境に対する生理(皮膚温等)・心理反応実験結果との比較検討を行った。その結果、モデルと測定結果との良い対応を得た。しかしながら、被験者数は1名であるので、今後さらに被験者を増やして、モデルの有効性について詳細に検討する必要がある。 3. 屋外環境における車いす乗車人体に対する熱的影響についての実験的検討 体温調節支援システムを屋外環境(特に日射を受ける環境)に応用するための基礎的検討として、被験者(健常者)を用い、市街地を車いす乗車状態での走行した場合の生理(皮膚温等)・心理反応を測定し、その特性について検討した。また、市街地における照り返し等を含めた温熱環境についても測定し、測定装置および測定方法の妥当性について検討した。
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