本研究では、いわゆる環境弱者としての車いすを使用する障碍者等を対象とした温熱環境設計・評価法の確立に関する研究を行う。23年度は、主に次の3項目を行った。 1.体温調節シミュレーションモデル応用の検討 本研究で検討している人体-車いす-空間連携による体温調節支援システムは、障碍者の日常生活全般での活用を目指すもので、屋外での応用については、日射の影響、風速の影響等を考慮する必要がある。日射の影響については人体の日射投影面積が必要となるため、車いすに乗車した人体を対象とした写真法による実測を行い、太陽位置による日射投影面積を求めた。さらに風速の影響については、車いす乗車状態に対する対流熱伝達率を実測によって求め、その体温調節予測に対する影響を検討した。 2.体温調節支援システム構築のための深部温代替部位の検討 体温調節支援システムを構築するには、人体(障碍者)の深部温を常時モニタリングする必要がある。しかし、深部温度を常時測定するのは実用上困難であるため、深部温度変動に追随して変動する皮膚温部位(深部温代替部位)を特定するために被験者実験(定常状態)よって検討した。厚手の布等で断熱した部位(下腿等)や、車いすとの接触部の皮膚温が深部温度と比較的良い対応を示し、深部温代替温度としての利用の可能性があった。 3.体温調節シミュレーションモデルの改良と提示装置の検討 前年度までに検討してきた脊髄(頸髄)損傷者の体温調節シミュレーションモデルについて、脊損者の健常部・麻痺部の温度をより詳細に予測できるように皮膚分節(デルマトーム)による部位分割によるモデルの構築を行った。このモデルの提示装置への組み込みの検討を行った。
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