研究概要 |
本年度は糞尿分離型バイオ(エコ)トイレの各種性能を使用実験により設計・運用上の問題点を把握するとともに、汚水を糞尿分離型バイオトイレで、雑排水を傾斜土槽で浄化し処理物を植物栽培に活用するシステムについて下水処理場と比較するエクセルギー解析を行なった。なお、実験に用いたトイレは大央電設工業(株)バイオR21-MDBR-B、(株)三笠BM25型バイオミカレット(以下D社、M社)の国産2種類であり、いずれも住宅での利用を想定して最小容量の製品を用いて最大2kg/dayの屎尿を投入するようにした。以下が研究を行なった結果明らかになった成果である。 1)低負荷状態では、いずれの糞尿分離型トイレも定格電力200W強のヒーターでほぼ常時加熱しているにも関わらず、内容物平均温度が38℃以下になっており、発酵に好適な50~60℃を維持できていない。 2)高発熱有機物(サラダ油)を投入した場合、内容物平均温度はD社トイレで最高61℃、M社トイレで最高39℃に上昇した。いずれのトイレもヒーターの加熱量は発酵熱の10%以下で小さいため、ヒーターより添加材の改良が有効である。 3)低負荷時のD社トイレを除けば、発酵熱に対する水分蒸発による潜熱移動が30%以下であり、糞尿混合型トイレと異なり脱水用エネルギー使用量が小さく済む。また、いずれのトイレも全放熱量に対する換気放熱量の割合が65%以上となり大きいため、換気・撹拌方法の改良が必要である。 4)D社トイレは低負荷時の嫌気発酵により強い腐敗臭が排気口付近で生じたが、換気により室内でし尿臭・腐敗臭を利用者に感じさせることは回避できていた。 5)糞便や杉チップなどのバイオマスのエクセルギーは、糞尿分離型バイオトイレ(M社、ヒーターoff、撹拌モーターon)の稼動用一次投入エクセルギーに対して0.9~1.1倍になっており、高い資源性をもつ。 6)糞尿分離型バイオトイレ+傾斜土槽では稼動用一次エクセルギー投入量が2,320~3,050MJ/yearであり、水洗トイレ+下水処理場のそれより大きい。したがって、その低減のために撹拌・加熱方法を改善する必要がある。 7)糞尿分離型バイオトイレでは、洗浄水の不投入と尿素肥料生産の回避を伴うことになるので、それら洗浄水不投入と尿素肥料生産回避を考慮した場合のエクセルギー低減量は、トイレ稼動用の一次エクセルギー投入量を上回る。
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