本研究の目的は、街路の犯罪を抑止するために、道路上の死角を克服するだけではなく、道路周辺の私有地にある死角を克服しようとすることにある。はじめに夜間の街路や街路の周辺にどの程度、死角が存在しているかについて調査した。調査は、街路の形状や周辺建物の密度、死角のでき方が異なる三つの地域を対象にした。一つは東京都豊島区南大塚の商業ビルと住宅の密集地、二つ目は石川県七尾市和倉町、三つ目は京府舞鶴市の北吸地区である。 南大塚では、建物同士の間隔が狭く街路周辺に犯罪と結びつくような死角は多くは存在しなかった。しかしながら、輝度の高いポール灯や看板灯によって明るさの順応レベルが上がり、相対的に輝度や照度が低い場所が見えにくくなるという問題があることが分かった。またこうした見えにくさは、看板灯など店舗からの光は時間によって大きく変わることから、時間帯を考慮した明るさの再計画が求められることが分かった。 七尾市和倉地区と舞鶴市北吸地区では、街路周辺部分に死角が多く存在した。それらは、駐車場や空き地、路地との交差箇所、建物同士の隙間、セットバックされたファサードなどよるものであった。こうした場所に対して、人が潜んでいることができるかや、街路からその人物を認識できるかについてアンケート調査を実施した。特に女性に対して不安感を抱かせやすいことが確認された。さらに、死角を克服し犯罪抑止に結びつくような照明方法を検討し、現場において簡単な照明実験を行った。
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