研究概要 |
まず基本的なストリートキャニオンモデルを対象に,スプリットファイバープローブ,PIVシステム,高速応答性炭化水素計を用いて,風洞実験を行った。その結果から風速,乱流統計量,平均濃度,濃度フラックス等の測定結果を基本的なデータベースとして整理することができた。ストリートキャニオン内においては,キャニオン上を吹く風との非定常な空気の交換が,内部の汚染質の拡散に重要な役割をしていることが確認できた。さらに申請者らの所属する大学校舎内の建物に囲まれた空間を対象に超音波風速計を用いた速度場計測,サンプリングバックやチューブを用いた濃度計測を行うことにより,実大環境における汚染質拡散データベースを作成した。 一方,乱流モデリング手法開発のための基礎的な検討として,これまで解析を進めてきた単体建物モデル周辺の拡散解析手法をストリートキャニオン解析に適用するにあたっての課題を抽出した。すなわち,LESとRANSモデルを比較すると,平均風速分布に見られる差異に比べて,平均濃度分布に大きな違いが表れており,この違いは,LESでは建物近傍の非定常な変動に伴うplumeの挙動が再現されることによって,濃度の水平方向の乱流拡散が正しく再現されたためと考えられる。これが再現されないRNG k-εモデルは建物周辺の乱流拡散を過小に評価する傾向にある。それらの知見に基づいて,ストリートキャニオンモデルを対象としたLES及び改良k-εモデルによる解析を行い,その精度を実験結果との比較により検証した。またそれらの知見を基に,解析コードの改良を行った。
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