研究概要 |
本研究の目的は、建築・都市空間における我々の行為が、ユビキタス社会の進展により如何に革新されつつあるのかについての基礎的な知見を得ることである。具体的には、執務行為の空問・時間的な流動化の現状を、裁量労働制を採用している法人組織のメールサーバーのアクセスログの分析から明らかにした。まず、81名の就業者の半年間(総計3,241,805レコード)のアクセスロダファイルに記録されたIPアドレス(ドメイン)に基づき、就業者別にワークスペースの数を集計した。その平均値は、裁量労働制の職種では6.8箇所と、オフィス以外の建築・都市空問において数多くのワークプレースを利用しているのに対し、定時型労働時間制の職種では1.3箇所と、特定の執務空問(オフィス)以外からはほとんどアクセスしていないことが分かった。次に、記録されたIPアドレスと使用プロトコルから空間流動化率を計測し、総就労時間を重みとして加重平均を求めてみると、定時型労働時間制の就業者では3.5%であるのに対し、裁量労働制の就業者では35.2%となり、実に3分の1以上の執務行為がオフィス外のワークプレースで行われていることが分かった。同様に、記録された日時から、時間流動化率および総就労時間を計測し、総就労時間を重みとして加重平均を求めてみると、定時型労働時間制の就業者が30.9%であるのに対して、裁量労働制の就業者では52.2%となり、概ね半分の執務行為が通常の執務時間外へと、既に流動化している実態が明らかになった。さらに、これらをクラスター分析にかけた結果、今日の就業者は4種類の執務スタイル(保守型、時間流動型、空間流動型、ポスト定住型)に分類できることが確認された。
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