本研究の目的は、建築・都市空間における我々の行為が、ユビキタス社会の進展により如何に革新されつつあるのかについての基礎的な知見を得ることである。具体的には、執務行為の空間・時間的な流動化の現状を、裁量労働制を採用している法人組織のメールサーバーのアクセスログの分析から明らかにすることである。これら執務行為に関する研究結果は、平成21年度には「電子メールの利用実態から見た執務行為の空間・時間的な流動化に関する研究:日本建築学会計画系論文集第648号」として、平成22年度には、「就労スタイルの時空間分析に基づく流動化指標の提案:日本建築学会計画系論文集第675号」として、研究論文に纏め、当初の研究目的を達成した。 一方、ここ数年でも、ポスト定住化は次の段階へと進みつつ有る。スマートフォン等の急速な普及により、まちなかの何処でもインターネットへの接続が可能となり、建築・都市空間における人々の行動様式もさらに変化しつつある。そこで、最終年度である平成23年度は、執務行為以外のアクティビティに向けた研究の展開を図った。具体的には、仮想空間での情報の取得がオンタイムで実空間での行動に反映される「まちあるき」に着目し、スマートフォン等に慣用なデジタル-ネイティブ世代を対象に、見知らぬ土地での「まちあるき」の被験者実験を行うことで、モバイルインターネット環境の有無による行動特性の違いを明らかした。これらの成果は、研究論文として纏め、現在、日本建築学会および国際学会に投稿中である。
|