写真測量は、仮設機材や仮置資材などで雑然とした建築現場においても手軽に実施できる測量手段である。トータルステーションなどの大型機材では取り回しが困難で実施が難しい局面においても実行可能であり、他の測量手法と比較して可搬性の面で特に優れている。 写真測量を実施するにあたって問題となるのがその精度である。研究開始前の予備実験においては±1.0%未満の精度が得られていたが、平成21年度の研究により、誤差を±0.3%未満とすることに成功した。具体的には、高解像度のカメラを用いること、前処理での画像歪み・ノイズの除去のアルゴリズムを改良したこと、領域判定の最適化を実施したこと、などの実施により、高精度化を達成することが出来た。 また、建築現場に持ち込み可能な可搬性の高いマーカを設計・試作し、これを用いたステレオ測量プログラム手法も新たに開発した。この独自のステレオ測量技術により、従来より用いられている特殊なステレオカメラなどを必要とせず、汎用性の高い方法で建築施工現場等でのステレオ測量を可能とした。この手法によるステレオ測量では、前述の写真測量の高精度化(±0.3%未満)と相まって実用に耐えうる精度が得られており、汎用デジタルカメラ1台のみで実行できる3次元測量手法を実現することができた。 以上の二つの測量技術は、建築施工現場での使用に限られるわけではなく、歴史的・文化的建築物の実地調査・測量等においても試用し、有用性を確認している。
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