本研究は、「シティリージョン単位において経済競争力の面のみを評価すると、必ずしも多心型ネットワーク構造のほうが単心型より優位だとはいえないが、直面する人口減少や気候変動の影響を考慮して環境・経済・社会を統合した持続可能性で判断すると、多心型が優位といえる」という認識を、文献レビューを通してまず確認することが目的であった。分析した結果、時代的な推移が明らかになった。すなわち、単心型で巨大化する都市の弊害に直面し、多心型を指向するようになり、そのメリットを探す傾向が見られ、多様な価値軸で評価が試みられるようになった。他方、近年、ネットワーク型ガバナンスが現実のものとなるや、その問題点を指摘する論文が増える傾向にあることがわかった。 また、中東欧都市・地域調査を実施したところ、西側に比べて競争力の劣る中東欧地域では、地域空間構造として多心型が単心型かを選択する状況にあるわけではなく、欧州ネットワークに組み込まれていくことは不可避ななかで、広域化した地域のひとつのセンターとなる戦略を持たざるを得ない現実がわかった。
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