研究概要 |
本研究では,歩行空間での安全・安心を左右する犯罪不安および自転車通行について考察を行った.犯罪不安については,主要因の一つと言われる路上犯罪について考察したが,犯罪の認知件数が発生件数に対して少ないとされる点および調査対象地における認知件数が少ない点から,侵入盗についても参照した.人びとの街路での行動について考察する場合には,通常,近隣住民の移動なのか,通過交通なのか,年齢層,性別など通行する人の属性が問われることが多いが,ここでは,通行手段に着目した.特に自転車交通は,近年エコロジーや経済性から注目されつつあり,ヨーロッパでは自転車専用道の整備が進んだ都市居住地域が多く見られる.ここでは、分離された自転車交通も含めて街路の浸透性について考察を進め、街路の浸透性と、当該街路の環境行動や通行との関係を分析し、防犯との関係について考察した。 平成21年度には,国土交通省が選定した「自転車通行環境に関するモデル地区」98地区の中から3地区を対象に調査を行い,自転車道の整備状況と,自転車交通の実況を明らかにした.また,街路の浸透性について検討を行った.平成22年度には,歩車自分離型住宅地開発が行われたR地区を選定し,街路の浸透性と犯罪の認知件数を調査し,両者の関係について考察した.また,早くから自転車環境の整備の実績を積んできたヨーロッパの2都市においてインタビュー調査を行い,その整備のプロセスと実態,および通行者の安全・安心について明らかにした.その結果,自転車専用レーンの整備によって歩行者の安全・安心が改善しうることがわかった. 平成23年度は,以上を踏まえて,R地区の犯罪分布と街路の浸透性の調査結果についてまとめ,海外発表をめざして翻訳を行うと同時に,R地区における通行調査を追加実施し,犯罪・浸透性と対照する行動データを補足した.また,ヨーロッパの自転車環境先進地域におけるインタビュー調査の結果を整理し,公表した(13.雑誌論文参照).また,結果として自転車専用レーンの利用が重要であったので,専用レーンへの誘導を目指したサインのあり方について,リアリスティックなCG映像による実験を行い,望ましいサイン・デザインの検討を行った(投稿中).
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