研究は、3年の期間において、「創造都市」(Creative City:都市が本来有している文化や産業やライフスタイルをデザインする力=創造性を発展させることで持続的な将来を切り開くとする考え方)に焦点を当て、過度の都市間競争を回避しながら、内発的な小規模の産業を発掘・育成し、地域の力を強めていく創造都市論を再構築することを目的とする。 そのため、平成21年度は、既存の創造都市論の系譜と内容を把握し、その特徴と問題点を抽出、わが国と諸外国の創造都市実現へ向けた取り組みの現況を把握することに力点を置いた。具体的には、まず、創造都市論の発生から定着までの歴史的展開を文献調査により跡づけた。その際、特に「コンパクト・シティ」や「サステイナブル・シティ」といった近年議論を呼んでいる都市論の系譜との関係に着目しながら、我が国における創造都市論を位置づけるべくつとめた。また、各種統計データの分析を行い、各都市における創造都市政策の成果に関する定量的な跡付けも行った。これらの成果は、現在、論文としてとりまとめるべく作業中であり、平成22年度中に海外雑誌への投稿を予定している。 さらに、平成21年10月にはドルトムント大学クンツマン名誉教授を迎え、国内研究者・実務家とのセミナーを行い、欧州での創造都市政策の新たな展開の現状と、その特質及び課題を把握するようつとめた。また、平成22年3月にはパリ第一大学グレフ教授を招聘、意見交換及び日本国内各都市(小樽市、八尾市、北九州市ほか)への視察・行政担当者へのヒアリング等を通じ、さらに議論を深めた。この間、トリノ大学サンタガタ教授との連携により、イタリア各地の創造都市政策の異なる展開についても情報収集を行った。これらを通じ、平成22年度に予定している欧州各都市へのフィールドスタディに向け、日本の事例と比較可能な欧州各創造都市を選択・分析するための参考指標・基準等が明らかになりつつある。
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