研究課題
基盤研究(C)
本研究は成長期に形成された郊外市街地を対象に、人口減少・市街地縮小期に向かえるこれらの地域の持続可能性について評価、自律的な市街地の管理とコミュニティのあり方を研究するものである。1.成長時代に形成された郊外市街地の功罪を検討するため、マクロスケールとミクロスケールの両面から市街地開発の構造と地区基盤の形成過程を分析し、都市計画制度(開発許可と線引き)の問題を検討した。局地的に出現しているように見える郊外スプロール(都市計画区域外)開発が、都市圏の広域的な構造と関係し、特に道路網の広域的な中心性のポテンシャルの高い地域に出現しており、それに対する都市計画的な有効な対策が不十分であったことが開発誘引の主な要因であったことが分析より明らかとなった。また、スプロール市街地に近接する市街化調整区域にまとまった規模で開発された開発許可による住宅開発市街地の施設及び環境等の水準について、敷地の規模、空地・緑地率、区画街路率、街区の形状と規模、公園の配置、近接主要道路の中心性、下水道の整備等の面から、郊外スプロール市街地と比較した結果、顕著な優位差は見られず、開発の質・水準という面から見て開発許可制度の持つガイドラインとしての機能には問題及び課題があると考えられる。2.次に、社会資本整備と郊外市街地の地価(固定資産税、都市計画税)との関係について分析した結果、郊外開発は相当な社会資本整備を伴った開発であるにもかかわらず、地価等の水準は地価水準が長年低下傾向にある中心市街地と比較し、地価、税金共に非常に低い水準にとどまっており、経済的な評価の視点からも良質な市街地環境の創成につながっていないことが示された。3.このような郊外市街地のストックが、将来迎えるであろう市街地の衰退・人口の減少という問題を考察するため先行事例として、長崎市の斜面市街地を取り上げ調査した。環境問題(防災・防犯の問題)、高齢者居住の問題(高齢化率、独居率)、建て替更新の問題(街全体の老朽化)が相互に関連しながら先鋭化している現実を明らかにし、これらの問題が郊外衰退市街地の主要な問題となるという観点から、問題の構造を分析した。また、そこでの先進的な行政、住民(コミュニティ)、市民団体(NPO)の協働の取組を把握した。4.最後に、過去の市街地拡大の履歴を分析するために用いたモデル(セル・オートマトン)を、市街地の縮減化シナリオ分析への適用を可能にするシュミレーションモデルとして開発すること、郊外スプロール市街地に芽生える広域的まちづくり組織(NPO)の介在による協働の市街地管理の仕組みが、縮減時代を迎える郊外市街地の課題となることを明らかにした。
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