本研究は平成21年から23年までの3ヵ年の研究であり、日本における過去30数年のバリアフリー研究の実績と具体的な実践経験を土台に、中国、韓国をはじめとする東アジア地域における都市環境のバリアフリー技術の到達点を明らかにするとともに、各国・各地域の風土、文化、都市環境の特性、生活変化を踏まえたバリアフリー沿革の特色を検証し、日本型バリアフリーの伝達と技術を導入する際の技術的諸課題と展開の可能性について考察することを目的としている。 平成21年度は研究初年度であり、日本のこれまでのバリアフリー関連法制度の特徴、残された技術的課題について主として文献調査、研究者ヒアリングなどから考察した。また、北京、上海両市においては、関係者のヒアリング、都市環境の概要調査を実施した。その結果、中国においては、障害者の人権意識、高齢化動向を背景に、日本の設計ガイドラインをモデルとしながら、ほぼ同等のバリアフリー法制度の発展が捉えられた。一方で日本と同様に、設計や施工における事業者の法遵守問題、利用者のニーズ把握が重要課題になりつつあることが確認された。実際のバリアフリー施設整備では、北京オリンピック施設を代表するように一部課題はあるものの順調に整備・改造進められ一定の水準に達している。遅れていた地下鉄のバリアフリー改造も基本的なバリアフリーを達成した。特に新しい地下鉄では、アジア地域におけるモデルとなる可能性があり、注目に値する。今後の課題としては、既存施設の改造問題であるが、伝統的な建築物等の設計思想を活かした特色ある改造方法を見出していきたい。
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