本研究は平成21年から23年までの3カ年の研究であり、日本における過去30数年のバリアフリー研究の実績と具体的な実践経験を土台に、中国、韓国をはじめとする東アジア地域における都市環境のバリアフリー技術の到達点を明らかにするとともに、各国・各都市の風土、文化、建築物、都市環境の特性、生活変化を踏まえたバリアフリー沿革の特色を検証し、日本型バリアフリーの伝達と技術を導入する際の技術的諸課題と展開の可能性について考察することを目的としている。 平成22年度は、6月に日本福祉のまちづくり学会と共同で東アジア地域(マレーシア、インドネシア、タイ、フィリピン)のバリアフリー専門家を招請した国際シンポジウム(会場:日本女子大)を実施し有効な知見を得た。9月に北京市、10月に上海市、12月にソウル市での現地調査、情報交換、文献収集を実施した。北京市では中国障害者連合会の本部を訪問し、障害者の立場からどのように現在のバリアフリー化の状況を捉えているか、政府への要望は何かなどのヒアリングを行った。同時に協力者である北京理工大学設計芸術院張教授と意見交換を行った。この結果、法制度的には進展し、施設整備的にはバリアフリーの進捗がみられたものの、市民意識の醸成には至っていないと判断した。上海調査では万博会場や観光施設でのバリアフリー化状況を調査し、基本的なインフラ整備の進展が確認された。ソウル調査では、主に文献調査、障害者団体ヒアリング、バリアフリー法を施行する政府関連機関の調査を実施した。結論として、制度、施設環境としてこの数年間での進展が目覚ましい。しかしながら歩車道段差の解消方法など日本の標準モデルと比較すると疑問もみられる。成果発表(口頭発表を含む)は日本福祉のまちづくり学会(6月会誌、8月大会発表)、日本建築学会(9月大会発表)で行った。
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