本研究は、ロボットを壁面や天井面に三次元配置した際の居住者の心理・行動を評価し、ロボットと共存するための建築空間の計画要件を求めることを目的としている。本年度は以下の基礎的検討を行った。 ■実験1:三次元配置された実物モデルとの最適対話位置:立位の被験者に対向する壁・天井に一辺120mmの白い立方体を一定間隔で設置して会話の適切さを評価させた。その結果、近距離で正面あるいは見下ろす角度が適していることが示唆された。 ■実験2:CGモデルとの最適対話距離の垂直面分布:立位の被験者と並行に位置する壁面に一辺120cmの立方体のCGモデルを一定の高さ間隔において平行移動させ、会話に適切と感じる垂直範囲を求めた。CGモデルは、AR(Augmented Reality、拡張現実感)技術を利用してヘッドマウントディスプレイで見るものとした。その結果、最適会話範囲の分布型には2つのタイプがあることが示唆された。 ■実験3:三次元配置されたCGモデルとの最適対話位置:立位・椅座位の被験者に、実験2と同様の条件でCGモデルを一定間隔の位置に提示して会話の適切さを評価させた。その結果、立位、椅座位ともに会話に適した位置は目線の高さで600mmの距離であることなどが示唆された。 ■実験4:実空間とAR空間における距離感の差異:被験者正面の床上に一定間隔でARマーカーを投影し、ARマーカーを目視した時の距離とCGモデルをARで見た時の距離感を比較した。その結果、実空間よりもAR空間の方がモデルを遠くに感じることが示唆された。 ■実験5:実物モデルとCGモデルに対する回避距離の差異:底面275mm×275mm、高さ800mmの白い直方体を、実物モデルを目視した時とCGモデルをARで見た時の被験者の歩行回避行動を分析した。その結果、CGモデルの方が実物モデルよりも回避開始、回避終了ともに近距離で生じることが示唆された。
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