CPTEDを構成する4要素(監視性の確保・領域性の確保・対象物の強化・接近の制御)に関して人間工学的研究(すなわち防犯人間工学)を実施し、CPTEDで定性的に言われていることを定量的に把握し実際の戸建て住宅の防犯に実践可能なデータ把握を目指す。 21年度は、敷地境界ラインと建物ラインの2段階で防犯実験を実施した。 実験前に、清永を中心として元・警察官などへの聞き取り調査を実施した。その結果、犯罪企図者が衣服や指紋、血液などの痕跡を犯行現場に残すことを嫌う現状(及び警察の鑑識技術の高さ)を把握した。その内容を評価指標に加えることとした。また同聞き取り調査から、敷地境界ラインから建物への取り付く、各侵入プロセスを阻止するためには低植栽が有効であることが指摘された。そこで、『住接地階バルコニー前における低植栽の防犯効果検証』と『サッシ前における低植栽の防犯効果検証』の2つの実験を行った。 1.『住接地階バルコニー~』の結果:バルコニー前の低植栽とは、戸建て住宅の敷地外周の低植栽+塀や集合住宅の1階外廊下、集合住宅の1階掃出し窓外のバルコニーをイメージしている。乗り越えにくさは被験者(犯罪企図者)の身体機能の影響は受けない。植栽の高さよりも奥行きの影響が大きい。植栽の奥行き1000mm、高さ500mmの場合には、80%の者が困難と感じている。 2.『サッシ前における低植栽~』の結果:塀を乗り越え敷地内に入ってきた犯罪企図者が窓サッシに取り付くことを防ぐためにサッシ前に低植栽を置いてやりにくさを比べた。植栽に触れずに身を乗り出してサッシを開ける動作を確認したところ、植栽の高さの影響はなく、奥行きが強く影響している(奥行きが1000mmでは困難率は70%を超えている)。次いで身長の高さが影響している。 このように犯行プロセスに応じた防犯環境設計を考え、そこで用いられる具体的なデータ収集を行った。
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