戸建て住宅を中心とした建築物の防犯対策に関する基礎的データを収集することを目的に人間工学的実験を行った。防犯に関しては、住宅の品質確保の促進などに関する法律に基づく住宅性能表示制度の10番目の性能分野として「防犯に関すること」(開口部の侵入防止対策)の項目が2005年に追加された。本実験ではここで挙げられている項目の妥当性について人間工学的実験で検証する。 2011年度は「バルコニーなどから開口部の下端までの高さが2m以下であって、かつ、バルコニーなどから当該開口部までの水平距離が0.9m以下であるもの」に該当する開口部の侵入しやすさを検証する。当該開口部は、住宅性能表示では玄関ドアや掃き出し窓に次いで侵入される開口部と位置付けされている。 研究方法は.上階バルコニー及び上階窓を模した実験躯体を作成し、バルコニーから身を乗り出し窓開閉を行い侵入の容易性を確認するものである。侵入方法の検証にあたっては、警視庁捜査三課(窃盗犯)に在籍後も警察庁指定広域技能指導官として後進の指導・育成をおこなった元・警察官の指導を受けた。 実験結果は、水平距離が大きくなるほど困難と回答する人の割合が増え、特に水平距離800→1000において困難と回答する人が大きく増える。現行の住宅性能表示制度における「バルコニー等から水平方向で900mm以内にあるサッシは区分bになる」という規定は妥当な規定と分かった。 また、バルコニーから左側の窓に侵入する場合、右側の窓よりもやや開錠しにくくなる傾向がある。被験者へのヒアリングから、「足をサッシ下枠に載せにくいこと」「右利きの場合は逆手になり体が支えにくいこと」が理由と考えられる。下枠に足が乗りにくい形状のサッシなど、建築部材側の設計での対応も考えられる。2011年度は3年間で得られた結果を総括して学会などで発表を行い、各自治体などで出している防犯まちづくりの指針などへ積極的に情報提供を行った。
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