大航海時代ヨーロッパのうち、今年度はスペイン、ポルトガルの歴史的な海港都市について実地調査し、旧ネーデルランド地域(ベルギー、オランダ)の都市と比較考察した。 1. 大航海時代に栄えた大都市リスボンは16世紀において、斜面地形に築かれたイスラム型の迷路都市構造、中世型の有機的都市構造から、長い水辺の船着き場と広場をもととする都市構造へと構造変化し、また市街地拡張における近世型のグリッドプランを登場させるなど、緩やかな幾何学化の傾向を示したことを明らかにした。 2. ポルトガル植民都市セウタ(アフリカ)、マカオ(東アジア)について都市構造を比較分析し、半島を利用して、丘上に砦を築き、足下に市街地と船着き場を整備して城塞化するポルトガルの都市形成手法を明らかにし、基本型と変異型として評価した。 3. 中世から近世にかけて反映したスペインの地中海海港都市カディスについて、古代、中世、近世の都市構造を含む特異な都市構造を分析した。特に多数の直線街路をランダムに配して複雑な網の目状をなす都市構造は中世から近世にかけての変化過程を示すものとして注目すべきものと評価した。 4. スペイン北部の海港都市サンセバスティアンは、海に突き出す山上に砦を設け、半島付け根の平地にグリッドプランの都市を形成しており、スペイン北部の固有のパターンとして評価できた。その中世から近世にかけて城塞都市化する過程を明らかにした。 リスボンの斜面海港都市のほか、セウタ、カディス、サンセバスティアンを併せ考察することにより、スペイン、ポルトガルにおける半島型の海港都市の類型を整理することができた。これは大航海時代の次の時代におけるネーデルランドの海港都市と対比でき、大航海時代における都市構造が変化する過程を明らかにすることができた。
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