大航海時代ヨーロッパのうち、今年度はイギリスの歴史的な海港都市について実地調査し、各都市について、都市構造の歴史的な変遷過程を分析し、また二次元・三次元復元を通して、都市内部の空間的な特性を抽出した。 1.北アイルランドの17世紀初期の植民都市ロンドンデリーは、十字形プラン、交差点の広場とモニュメント、グリッドプラン、環状の市壁よりなる独特の都市構造が形成され、イギリス近世都市のモデル的な形態を具現したことを明らかにした。 2.中世都市から近世都市への転換に関連して、三都市に着目して分析した。ブリストルは十字形街路と交差点のハイクロスを核とする中世都市構造を維持しつつ、スクウェア広場型の新市街地を加えて拡大した。ポーツマスは中世都市の線状の都市構造をもとに、中世都市地区と工業地区風のドック地区街区構造の二元的な構成を示した。リヴァプールは線状グリッドの中世小都市をもとに、急速に発達するドック群を加えた。 3.ロンドンは大火後の大改造計画が捨てられ、中世都市構造を継承する保守主義的な発展過程をたどった。復興の際にはテームズ河畔の船着き場空地の確保、他方で郊外ドック地区、スクウェア広場型のグリッドプランの新市街地の展開が見られた。 総括して、大航海時代イギリスの都市計画手法は、線状の街路、十字形街路、交差点のモニュメントとスクウェア広場、開発域を限った内部でのグリッドプラン等を特徴とし、ロンドンデリーにその典型を見出すことができた。大航海時代に関連しては、旧市街は維持、継承しつつ、郊外にドック地区を設けるという独特の都市構造への転換が見られた。大陸側の同時代の海港都市に比べて、合理的な都市計画理念の確立という点では共通するものの、都市計画手法としては大きな差違を示すことを明らかにできた。
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