研究概要 |
平成21年度は,香川県高松市国分寺町に所在する国分寺本堂を事例に研究をおこなった。国分寺本堂は昭和13年9月の大暴風雨によって屋根の一部が破損し,解体修理が昭和16年2月に起工し,昭和18年8月に竣工した。「國寳建造物國分寺本堂維持修理報告書」は昭和修理に関する貴重な資料であり,竹口富太郎が主任技術者を担当し,起工後に現状変更が許可されていたことが判明した。本堂は天正年間の兵火を免れた旧講堂であることが伝わり,天平時代の講堂跡に旧礎石を転用して建立されていた。昭和修理における痕跡調査では近世に小屋組と妻飾が改造され,内陣に須弥壇と厨子を新設したことが明らかとなった。内陣は斗〓と蟇股によって天井を引き上げて棹縁天井に改めていた。寛文年間には向拝を附加し,内外陣境装置は飛貫上に欄間彫刻を設け,間仕切装置を改造したことが墨書から判明した。昭和修理における現状変更の要旨の全容が明らかになり,修理前実測図にどのような現状変更がおこなわれていたかを明示した。現状変更では外部の側廻りの飛貫,胴貫,足固貫の各貫成,連子窓,縁側の高さを痕跡にもとづいて復原した。寛文年間に附加された向拝は撤去し,木階段を石段に改めた。内部は寛文年間の造営による内外陣境装置に加え,内陣両入側境,後陣境,来迎柱,外陣天井,内陣天井を痕跡にもとづいて復原した。連子窓,鬼瓦,側入口の桟唐戸,内外陣境の格子戸と菱欄間の現状変更には,類例調査が実施されていた。しかしながら,小屋組と妻飾は近世の改造であったが現状を踏襲して修理され,須弥壇と厨子は近世の新設であっても現状の通りとされた。
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