研究概要 |
四国地方では,古社寺保存法によって特別保護建造物の資格あるものに19件20棟が定められ,国宝保存法によって国宝に指定された古社寺建造物は4件4棟である。合計して23件24棟のうち,解体修理工事が14件14棟,半解体修理工事が1件2棟,屋根葺替工事が2件2棟,あわせて17件18棟の修理工事が竣工していた。豊楽寺薬師堂と竹林寺本堂は,解体修理後に屋根葺替工事が竣工しており,東禅寺本堂(樹ノ本薬師堂)は戦災焼失し,指定を解除された。現存する古社寺建造物は22件23棟となり,このうち14件15棟は解体あるいは半解体修理が竣工していた。報告書が刊行された修理は興隆寺本堂に限られ,土佐神社本殿,幣殿及び拝殿は昭和61年度に半解体修理が竣工し,報告書が刊行されていた。これまでに修理工事報告書が刊行されていない古社寺建造物は,12件12棟を数える。 本研究は,上記のうち修理工事報告書が未刊行である豊楽寺薬師堂[国宝]の明治修理,竹林寺本堂[重要文化財]の明治修理,土佐国分寺金堂[重要文化財],讃岐国分寺本堂[重要文化財]を事例に,新出資料を紹介し,文化財修理の方針とその内容について考察を加えた。本研究では,文化財的な価値にかかわる事項である現状変更の要旨とその理由説明について検討を加え,竣工した古社寺建造物の当初形式を解明するうえで,文化財修理の検討の必要性を明らかにした。本研究は文献研究の有用性を提示するとともに,当初形式を解明する調査研究に新たな知見を提供し,今後の基礎資料になるものと考えられる。
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