研究課題
本年度は、台湾における伝統都市の分節構造を解明するために、宜蘭、嘉義、台南において現地調査を実施した。現地での街区・街路形態などの都市空間のマッピング調査・ファサードや平面構成など建築物の実測調査、地域コミュニティの変遷や建築の履歴に関するヒアリング調査等を実施した。さらに昨年度に引き続き、都市内社会の分節構造をもたらす磁極として、1)寺廟と2)市場を中心とした調査を実施することで都市空間の分節構造に関する考察を深めている。1)寺廟調査では、宜蘭・天后宮、嘉義・城隍廟、台南・武廟・天后宮・城隍廟(初年度未調査分)等で現地調査と史料収集を実施し、寺廟周辺の街区・街路調査を実施することで、清代からの伝統都市の分節的な都市空間構造の成立と展開過程を解明することが可能であった。2)市場調査では、清代の城壁都市であった宜蘭と嘉義において、自然発生的な廟前・街路市場から日本統治期の公設消費市場の建設に至ることで、都市空間にどのような変化をもたらしたかについて検討した。実測調査では、宜蘭・嘉義市役所市場管理事務所の全面的協力を得て、これまで明らかにされていない日本統治期における宜蘭・嘉義公設市場の建築遺構の実態を把握することができ、伝統から近代への市場空間の分節構造の差異を読み取ることが可能であった。これらの研究成果は、平成24年度の日本建築学会大会(投稿済)で報告予定である。一方、日本の伝統都市の分節構造については、「都市的な場」としての中近世の宿・市と町家について考察し、中世都市研究会大会において発表すると同時に、江戸から東京へと都市空間が変容する中で、地域継承空間システムとして祭礼空間がどのような役割を果たしたかについて考察し、「近現代の東京の市街地形成において「新開町」と祭礼空間が果たした役割」(『日本建築学会総合論文誌』第10号、平成24年1月)にまとめている。
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日本建築学会総合論文誌
巻: 第10号 ページ: 35-38
都市計画学会論文集
巻: Vol.46, No.3 ページ: 721-726
日本建築学会大会学術講演梗概集
巻: F-2 ページ: 605-606