1.地方においては、一般的に国の出先機関が洋風建築を他に先んじてもたらしたと考えられる。このため政府発行の「職員録」等を用い。明治期における政府出先機関の存在と期間を、熊本と九州各県について明らかにした。熊本のみならず九州各県について調査したのは熊本の特徴を浮き彫りにするためである。この資料は、今後の研究の基本資料のひとつとなるものである。 2.上記1.の国の機関の中でも、熊本に設置されるのが最も早く、明治一桁の年代から設置された郵便電信関係機関と陸軍関係の機関の資料を収集し、このうち郵便電信関係建物については建物の概要を時系列で明らかにした。 (1)郵便電信関係機関では、国会図書館、国立公文書館、逓信総合博物館等において資料を収集し、特に明治初期の資料が得られた。明治初期に設置されたのは郵便役所と電信局であり、明治18年逓信省設置後それらが合併し郵便電信局となっていく等、収集した資料を基に時系列に、建てられた建物の名称、建築年、場所、建設経緯、概要、特徴等を明らかにした。 (2)陸軍関係では、防衛省防衛研究所において、鎮西鎭台、熊本鎭台関係の明治初期の資料を収集した。それらは殆ど毛筆による資料であるため、それを階書体で表記する(筆写)作薬を行なった。 3.現存する明治期の建物のうち、現在のJR九州肥薩線の駅舎、日本製紙(株)が所有する発電所各1棟計2棟について、実測調査により平面図、断面図、立面図等の図面を作成した。またそれらの建物に関する資料調査を行い建設経緯等を明らかにした。このうち駅舎についてはその平面形の特徴を明らかにした。また、その他の明治期の建物についても、さらに明治期の建物との比較検討のため、明治期以外の近代建築、熊本の市街地の変遷についても研究を行った。
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