研究課題
析出を用いたナノグラニュラー磁性体は、組成や処理温度、時間を変化させることにより、種々の条件でナノ磁性粒子を自己形成させることができる。この手法を用いるとナノ磁性粒子が最も安定な相変態経路をどのように取るかが分かるので、スパッタ等、非平衡性の高い手法では取得が困難な情報が得られる。これまで我々は、本手法を用いて、銅中でのコバルト、鉄及び両者共存の条件下での組織形成とそれぞれの段階の磁気特性を調べて来た。今年度は、特に銅中に鉄とニッケルとを固溶させた合金でのナノ磁性粒子形成を調べた。銅-鉄合金にニッケルを添加し、その量を増加させて873Kで焼鈍すると、低濃度では銅-鉄2元系合金と同様、粒子の双対化は顕著に見られなかったが、15at%以上のニッケル添加量になると顕著な双対化が生じ、20at%添加では、5-10個以上の粒子対が観察された。また焼鈍温度を変えてナノ磁性粒子対の自己形成の過程を調べた所、1073Kでは、粒子は873Kの粒子に比べて粗大かつ単独で分散しており、873Kでの粒子形成とは大きく異なる粒子形成と分布を示した。ナノ粒子の組成が温度によって異なる可能性があるため、EDXによる組成分析を行った所、1073Kで銅濃度がやや高いものの鉄とニッケルに関してはほぼ同じ比率であることが分かった。これらの試料について低温から常温に掛けての磁気抵抗も測定した。その結果、磁気抵抗低下は873Kでは数%であったが、1073Kでは15%に近い値を得た。今年度の研究結果については、以下の2点が重要である。従来、鉄やコバルト粒子の析出に関して粒子と銅母相間の格子間隔の違いから粒子形成を解釈する立場が主流であったが、本研究の結果は明らかにこの解釈の限界を示している。理論的には、磁性粒子の相互作用について双極子相互作用とRKKY相互作用の関与が提起されていたが、これまでに実例が報告されていない。本研究で得られた構造的特徴はRKKY相互作用に起因している可能性を示唆しており、理論と実験結果の詳細を検証する好事例になると考えられる。
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