ナノグラニュラー磁性体は優れた応用性を有しており、硬磁性体材料、軟磁性体材料として新機能を付与する手段として研究されている。ナノグラニュラー磁性体は本質的に複合相から成り立っており、ナノレベルの組織の違いによって特性に大きな違いが出ると考えられている。しかしながら組織と磁気特性の基礎的な研究な必ずしも十分行われていると言い難い現状である。組成や処理温度、時間を変化させて自己形成させたナノグラニュラー磁性体は、いろいろな構造・形態の組織を示し、制御が可能である。組織や物性変化を系統的に調べればナノ磁性粒子がどのような相変態経路を取るか、どのような相互作用が働くか追跡が可能である。我々は銅中でのコバルト、鉄及び両者共存め条件下での組織形成とそれぞれの段階の磁気特性を調べて来た。今回の科研費支援を受けた研究では、特に銅中に鉄とニッケルとを固溶させた合金でのナノ磁性粒子形成を調べ、Ni添加が磁性微粒子形成に顕著な変化をもたらすことを明らかにした。銅-鉄合金にニッケルを添加すると平衡状態図の観点からはFeNi_3相が出現すると推測される。しかし、等温焼鈍における組織と磁気特性の時間的変化は単なるFeNi_3相の形成から予想されるような単調な推移を示さないことが明らかになった。Cu-Co合金にNiを添加しても組織と磁気特性に複雑な変化が見られた。このような変化から考えると、従来使われていた平衡状態図の磁気変態温度だけでは本研究で得られた結果を説明できない。析出によって形成したナノ磁性粒子では、粒径や組成の変化が起きると考えるべき実験結果が得られた。このような変化が起きるとナノグラニュラー磁性粒子は磁気的にも複雑な挙動を示す可能性が有る。並行して行った熱磁気天秤法によりこれらの合金の磁気変態点を測定した。この結果によると、Cu-Ni-Co合金には複数の磁気変態点が見られることが分かった。
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