研究概要 |
高エネルギーの中性子やイオンの照射を受ける原子炉材料や核融合炉材料の内部では,ナノメートル程度の領域に,はじき出し欠陥が高密度に生成する.こうして生成した格子欠陥は,熱活性化プロセスとして拡散する結果,照射の影響は時間とともに徐々に材料全体にひろがっていく.このとき同種の点欠陥どうしが集合化すると,ボイド(材料内の空洞)や転位ループとよばれる欠陥集合体が作られる.こうしたミクロ構造変化は,材料の寸法安定性や機械特性に大きな影響するので,照射による材料ミクロ構造変化を予測することは,照射下で使われる材料の寿命評価・健全性評価に重要である.今年度に実施した検討は以下のとおり. (1)まず,これまでモンテカルロ解析によって検討を行ってきた欠陥集合体の核生成プロセスについての知見をまとめた.ボイドや格子間原子ループに関する核生成速度のdpa/s依存性や温度依存性の物理的解釈,HeバブルのHeの役割,各種集合体の核生成潜伏期間と点欠陥が十分に蓄積するまでの期間の比較等の検討を行った. (2)次に,欠陥集合体核生成成長を模擬するキネティックモンテカルロ(KMC)解析と,系全体のミクロ構造の時間発展を追跡する反応速度論法をカップリングすることを試みた.反応速度式の定常解に対してKMC解析は実現できたが,それらを連成して解くことについては,両手法の時間・空間スケールの違いを陽に取り込む必要があることから,今後の課題とすることにした. (3)材料の中性子照射効果をイオン加速器照射等によって模擬する場合の加速係数の評価について考察を行い,原子力学会2011年度秋の大会にて発表した.
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