研究概要 |
◎ミスフィット酸化物Ca_3Co_<4-x>M_xO_<9-δ>にMとしてCrを、Ca_<3-x>Co_4M_xO_<9-δ>にMとしてSr、La、Agを添加し試料を作製した。またCa_3Co<4-x-y>M_xM'_yO_<9-δ>にM,M'としてLa,Agを添加し試料を作製した。X線回折実験の結果、Ag添加の試料を除けば、ミスフィット酸化物相が支配的であり、x,yが大きくなるとわずかに不純物相が生成した。Ag添加はほとんど固溶せず、析出物として生成した。1元素を添加すると熱電性能は向上したが、熱電性能向上への寄与は2元素を添加する方が大きかった。 ◎STEM(走査型透過電子顕微鏡)観察により、ミスフィット酸化物の結晶粒内に多くの双晶構造を確認した。双晶界面は岩塩型CaCo_2O_3層とCoO_2層との境界にあり、c軸を軸として60°、180°回転した構造を確認した。 ◎Sr、La、Crの1元素を添加した試料では、ゼーベック係数、電気伝導度には大きな変化は見られなかったが、熱伝導度が減少し、その結果無次元性能指数ZTが増加した。La,Agの2元素を添加した試料では、La1元素添加よりも電気伝導度が増加し、さらに性能指数が増加した。 ◎Ca_<2.7>Sr_<0.3>Co_4O_9に対するHAADF-STEM観察、EDX-STEM観察により、Srのほとんどが岩塩層中のCa位置、一部がCo位置を占有し、CoO_2層には置換しないことがわかった。 ◎EELS-STEMによりCoO_2層及び岩塩層におけるCo-L_2,Co-L_3ピークを測定し、各層中のCoの価数をそれぞれ+3.48±0.10価、+3.02±0.08価と決定できた。これらはSrを添加しないCa_3Co_4O_9のCoの価数と一致し、Srの岩塩層への固溶がCo価数を変えることなく熱伝導率を減少させZTを向上させることがわかった。
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