研究概要 |
今年度は,B_2O_3フラックス処理が鋳造時の析出結晶相に与える影響を明らかにするために,種々の条件でフラックス処理を行ったFe-B-Si-Nb金属ガラス試料を作製し,構造と磁気特性を詳細に調査した。その結果,フラックス中での母合金の溶落時間を200s以ヒとし,溶湯を十分にフラックスに触れさせるノことにより,比透磁率が200程度まで低下することが分かった。更に溶落時間を長くすると比透磁率は徐々に増加する傾向を示し,700sで600程度の比透磁率が得られることが分かった。またフラックスを使用せずに同様の条件で試料を鋳造した場合は,比透磁率が低下しない(2000程度)ことが分かったれにより,フラックス処理時の溶落時間で,比透磁率をコントロールできることが明らかになった。 また試料の構造を調査した結果,フラックス処理を行った試料では,試料の中心付近に結晶相が析出していることが分かった。フラックス処理を行わない場合は,試料はほぼガラス単相であった。一部の未処理試料では結晶相が析出していたものの,試料の表面付近のごく薄い領域に限定されていた。従って,フラックス処理により試料中心部に結晶相の析出が促進され,それにより比透磁率が低下したと考えられる。フラックス処理による結晶相析出のメカニズムは完全には解明できていないが,溶落時間と磁気特性の間に相関が見られることから,溶湯とフラックスの間の化学反応などが関係している可能性が考えられる。
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