研究概要 |
本申請研究の目的は、電気化学析出(めっき)膜中に存在する水素の存在によって誘起される拡散促進効果の機構を解明すること、また、その成果の工業的な利用を追求することにある。 今回の実績を次に示す。 1)めっき膜は、金属-水素合金であるという基本的な事項が明らかとなった。 2)膜中の水素濃度は、バルクの平衡濃度をはるかに上回る過飽和状態であるとが明らかとなった。 3)電気化学的には、水素が共析しないと考えられていた貴金属めっきにおいても水素が確認された。 4)多くの金属めっきにおいて、「拡散促進と低温再結晶」が見いだされた。 5)膜中の水素は、その存在状態に応じて、その安定度は、いくつかのレベルにあることが解明された。 6)膜中の存在状態は、バルクの高温-高水素圧状態で得られたものと類似していることが分かった。 7)水素の存在状態に応じた熱処理により、適切な水素の脱離をはかることができることが明らかとなり、工業材料としてのめっき膜の安定性の向上に大きく寄与する成果が得られた。 以上のように、めっき膜は、過飽和に水素を固溶した「金属-水素」合金ととらえることができ、この点で、(高温・高水素圧下で)水素を固溶したバルク金属との接点が見出すことができる。これまで、Ni,Co,Fe,Cr,Cu,Rh,Pt,Pd,Ni-Fe,Ni-Co,Ni-P,Ni-B,Co-B,Fe-C,などの系で検討を進め、めっき膜特有の構造や物性への水素の関与について、多くの新しい知見が得られた。
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