研究概要 |
近年発見されたNi-Mn-Z(Z=In,Sn)磁性形状記憶合金のマルテンサイト(M)相に磁場を作用すると、磁場誘起逆マルテンサイト変態が観測されると同時に、巨大磁気抵抗効果が現れる。巨大磁気抵抗効果は見出されて間もないためその起因については現在全く不明である。その起因を調べる目的で、以下の研究を行った。 (1) Ni-Mn-In磁性形状記憶合金 50%Ni断面のNi-Mn-In磁性形状記憶合金に焦点を絞り、良質多結晶を作製した。化学量論比よりMn原子が多いNi-Mn-In合金の結晶構造解析、熱分析、磁気測定を行い、実験結果を基にして同合金系の磁気状態図を決定した。磁化とメスバウワー分光実験から上記合金のM変態温度以下の磁性が常磁性であること及び余分なMn原子の磁気モーメントがNi,Mn副格子の磁気モーメントと強磁性的に結合していることを明らかにした。 (2) Ni-Mn-Sn磁性形状記憶合金 磁気測定と結晶構造解析の実験結果を基にしてFe添加Ni-Mn-Sn磁性形状記憶合金の磁気相図を決定した。上記合金の電気抵抗率、熱起電力、磁気抵抗を測定した。強磁場下で70%を超える磁気抵抗率を観測した。Ni-Mn-Sn合金の光電子分光と第一原理バンド計算を行い、上記合金のM変態の機構について検討した。本年度の研究により、上記合金の母相とM相のフェルミ近傍における電子状態が著しく異なっていること及びM変態の機構に関する有力な情報が得られたので、研究課題は急速に進展すると予想する。
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